音楽を呼びさますもの

恋文を書くために埋め尽くされた練習ノート

林檎が樹からおちるまで

告白されてから彼女は


林檎が樹からおちるまで


ずっとめそめそ泣いていた


林檎の樹は校舎の裏にぽつりとたっていて


泣いていたわけは ぼくにはわからないけど


それはさいごにいっこだけのこっていた果実


だったので 赤い果実をうしなった林檎の樹はさみしそうにみえた


林檎の樹は彼女のことがきっとすきだったんだろう


元気をとりもどした彼女はいま 教室の隅で林檎のような頬で微笑んでいる