音楽を呼びさますもの

恋文を書くために埋め尽くされた練習ノート

midnight call

女「もしもし」

男「もしもし、あ、おまえか。おい今いったい何時だよ」

女「AM3:30。。すごい迷惑な女でしょ。。急に声がききたくなって。」

男「こんな時間になんだよ。。いやおれ。。じつはいま変な夢見てたんだよ。。」

女「どんな夢?」

男「あ~。いうよ。。おまえが部屋にピストル隠し持っててさ。。

  おまえが大事そうにそれを磨いてるんだよ。。。。」

そのとき電話口で バーン という大きな銃声

男「おい!どうした、だいじょうぶか!おい返事をしろ!」

沈黙 とともに電話が切れる

男「まってろ 今行くからな」

男は真っ赤なロードスターに飛び乗り

女のマンションをめざす  距離およそ17㌔

スピードメーター170㌔

タコメーター7000rpm

カーナビの音声は最速近道を的確にしらせる

次の交差点左方向 ←

次の細い路地を 右方向 →

男「おいなんだこの道、はじめてとおる道だぞ」

車はなぜか岸壁近くを走っている

カーナビの音声 つぎの三叉路を右 →

男「おい!そっちはたしか海崖」

男はハンドルを左に切った

カーナビの音声 が 気のせいか女の声にきこえてしかたがない

海から吹く浜風が耳を、なまあたたかくなぞる

枝の茂った街路樹が 車がとおりすぎるたび

こっちを振り向くようで こわい

男はようやく マンションの入り口に たどりついた

車を降り、階段を大急ぎで駆け上がり

女の部屋のドアをたたいた。

どんどん!おい!あけろ!

ドアはかんたんにあいた

が、部屋の中はからっぽだった 家財道具もいっさいない

ただぽつんとおかれた水槽には金魚が2匹泳いでいる

洗面所の鏡が割れている。さっきの銃声は鏡にうつる自分を撃った音だろうか

男「いったいどういうことだ。」

男はこわくなり携帯電話をかけた、が依然不通である

男は仕方なく部屋を後にし、赤いロードスターに戻った

エンジンをかけたその瞬間、後頭部に冷たい銃口があてられた

女「殺されたくなかったら、いうとおり車を出しなさい

  うしろをふりむいたら引き鉄をひきます。。。。」

女の声は辛辣であった。男にはそれが遊びではないとすぐ判断できた。

男「わかった言うとおりにするから、撃たないでくれ。。」

女「海岸どおりまで、ノンストップで、ノンブレーキで」

男はアクセルを踏み込む

男は後ろをふりむこうとするのだが、首は金縛りにかかったように動かない

赤信号の交差点を猛スピードでつっきったとき、男は恐怖心が消えた

むこうに朝陽のみえる丘がみえてきた。。ここはふたりがはじめてキスした場所だった

頭上にはいまにも消えそうな下弦の月がまだぼくらを照らしている

車の時速は170㌔ エンジンはずっとレッドゾーンで唸りをあげている

そらがすこしづつ、しろくなってきた。。よあけはちかい

男はカーステレヲのスイッチをいれた。音楽は一切きこえてこなかった

が、周波数777KHZにダイアルがあわさったとき

サーッという電波音が、さらさらとながれる浜辺の砂の音にかわった

その瞬間、男の首の力がぬけた。男はうしろをふりむいた

男「愛してるよ」

そのことばと同時に、ピストルの銃声が海にこだました。

女「愛してるよ」

その声はすごくやさしい声だった

弾は男の首をかすめ、フロントガラスを粉砕した

車はカーブにさしかかり、そのままガードレールを突き破り

激しい衝撃とともに車は岸壁から海へと落下していった

水平線から真っ赤な太陽が顔をだすのがみえた

うすれゆく意識の中で、男はそれが激しい愛の表現であることをしった



                               おしまい^^