音楽を呼びさますもの

恋文を書くために埋め尽くされた練習ノート

『』

アンテナには方向があるけど

ススキを揺らす風に方向はない

あっちの方向から歩いてきた人がこっちにむかってくる

駅前の交差点はこんなに人であふれているのに

だれひとり顔を合わせようとしないのに

なのにそのひとは こっちにあるいてくる

自転車の後ろの荷台にすきな子をのせてペダルをこいだ

会話をするのがこんなにむずかしいとはおもわなかった

あのときのひとことがいえなかったから

ぼくはこうしてまだここにいるのだろう

風とともに そのひとがこっちにあるいてくる