音楽を呼びさますもの

恋文を書くために埋め尽くされた練習ノート

谷川俊太郎「『はだか』より

イメージ 1

【 と お く 】


      わたしはよっちゃんよりもとおくへきたとおもう

      ただしくんよりもとおくへきたとおもう


      ごろーよりもおかあさんよりもとおくへきたとおもう

      もしかするとおとうさんよりもひいおじいちゃんよりも


      ごろーはいつかすいようびにいえをでていって

      にちようびのよるおそくかえってきた


      やせこけてどろだらけで

      いつまでもぴちゃぴちゃみずをのんでいた

      ごろーがどこへいってたのかだれもわからない

      
      このままずうっとあるいていくとどこにでるのだろう

      しらないうちにわたしはおばあさんになるのかしら


      きょうのこともわすれておちゃをのんでいるのかしら

      こころよりももっととおいところで


      そのときひとりでいいからすきなひとがいるといいな

      そのひとはもうしんでてもいいから


      どうしてもわすれられないおもいでがあるといいな

      どこからかうみのにおいがしてくる


      でもわたしはうみよりももっととおくへいける。。。。