音楽を呼びさますもの

恋文を書くために埋め尽くされた練習ノート

2016-01-01から1年間の記事一覧

孵化

空想のなかでうまれて 空想のなかで死んでいく無数の命 中指にペンだこをつくることのなくなった現代人 その物語の誕生秘話、奇蹟が重なり鳶が鷹を産んだ 結局ぼくがまもることのできるのはたったひとりで ぽつんと凍土に生み落とされ生暖かい雨の日に孵化し…

不自然なふたえまぶた

腫れぼったい、ふたえまぶたに恋をしたおとこの子は幾つになっても瞳の奥に恋をするあさ、鏡のまえでつくったふたえまぶたはその不自然さが美しいきみの瞳が輝いているのは教科書を読んでいるときではなく漫画を読んでいるときだ夜になると眠くなってまぶた…

すきなひとはいますか

ぼくのよこでずっと笑っていてくださいと彼は言ったけれどそれにそれほど重要な意味があると気付かなかった彼女はわたしはいつも笑ってるように見えるけどあなたの見ていないところで泣いているのよと答えたそうじゃないんだ、きみの笑顔が僕のたからものな…

永遠にはデリカシーがない

腫れものにさわるように 傷つけないように 傷つかないようにしたのが逆効果 かえってきみを傷つけてしまったようだ そんなことなら最初からえぐい三角形の 彫刻刀のようなので傷つけてしまえばよかったと後悔する 傷モノにされたわたしが今あなたを恨んでは…

原木のうた

鼻の下をのばさずにまともな顔をしてきみのとなりに座っていたことがかえって可笑しくみえたらしいきみのほしいものが知りたくて仕方ないそれが干し椎茸の原木でないことはあきらかだ木枯らしの吹いた日のことだった からだの芯からあたたまってみませんかそ…

いまいちばん誰がすきなの

誰がすきなのかわからないくらい 誰かのことがすきだ 自分自身の最低な部分を原稿用紙に書け という課題が筆記試験にでた ぼくは制限時間ぎりぎりまで考えたが 白紙の答案用紙を提出した それを書いてしまったら とびっきり善人になっちゃう気がしたからだ …

ガチャ目

わたしの左目と右目の大きさは極端に違いまして 左目は宇宙人の目に似てるとよく言われます 右目で1回まばたきする間に左目を3回パチクリさせます トンボのメガネは水色メガネ 右目で空を見上げながら左目で新聞を読みます 青空が目に沁みる日は渇いた涙に目…

高倉健

しなびたナスみたいな高倉健みたいな顔でたたずんでいる自分を想像してみる それはそれでかっこいいと思います 運動神経の弱い女の子がすきです 孤独なのに孤独をかくそうとするしぐさが好きです 魚を食べると頭が良くなるってほんとだった シンナーを吸うと…

ユニコーン

なにかにまたがりながら駆けていく夢を見た馬かユニコーンだったのか よく覚えていない走り出したら股間が揺れてこそばかった空が水色で水彩画の黄色の絵の具は菜の花をあらわしていたのだろう景色の移ろいとは地平と空の曖昧な境界線駆けっこは得意かい?ぼ…

満開

満開になったら花見にいきましょ満開の瞬間はたぶん10秒くらいでそれを見逃してしまった僕等に明日はない50歳の桜は幹の下の根がマグマちかくまで伸びていて皮下を剥くと皮下をびりびりと剝ぐとなかに美しい女性が眠っている

卒業

きょうはきみの卒業式 音をさがす旅にでかける それもそれでよかろう 5分くらいにまとめあげられた音楽なんて 死んだほうがいい コンクリートのしたの地面を 奥深く削る音がすきだ ダイヤモンドより硬い地球に 穴をあける 柘榴の割れた音がすきだ うにうにう…

早春賦

水風呂のなかからうまれた魚は死んだ目をしている が その深海魚みたいなさかなは 浴槽の底の水垢でくろずんでいるあたりで 6億年くらいじっとして棲息して ぱぱとままがまだ なかよしだったころの はだかのぱぱとままの そのまんまのすがたを シーラカンス…

鬱憤がニキビとなって噴き出してきた

落ち着いてから話そうと思っていたのが逆効果、かえって鬱憤がたまってしまった 味の薄い濃いも、 あたまの良い悪いもそれほど問題じゃない おれはまだお尻の青い猿だ おまえは今のこの仕事が好きかい この温もりにつつまれたような暮らしに満足かい 悪いな…