音楽を呼びさますもの

恋文を書くために埋め尽くされた練習ノート

刺身

お刺身になったさかなの気持ちになってみた包丁で切り身になったぼくあり得ない!くらい潔癖症なぼく消毒液で手をこするのがすきだマザコンでホモでロリコンでどうしようもなく陰気臭い妄想に妄想を重ねてぼくは正常になってゆく毎晩食卓にお刺身が並ぶ家庭な…

儀式みたいな朝食

ダンボール箱の上に白布をしいて 白い紙皿を4枚ならべる 神に祈りを捧げる 皿に盛られた4粒の空豆 しあわせの空豆 そのよこに柿の種を4粒ならべる 目かくしをして耳栓をしてお尻を出す ジャックと豆の木 天までのびろ それではいただきます

くすりゆ

薬湯に漬かっただけで健康になると信じてた ずんどう型の湯船に柚子を浮かべて わりと熱めのお湯に首まで浸かって100数えた 湯冷めしないように髪を乾かし 炬燵に入ってそのまま眠った 素足が布団からはみ出しすこし寒いとかんじた よあけまえ きつねにつま…

癖字

まず君に最初に伝えたいこと それはぼくの悪質な癖字 とくに「ま」という字がまがります それが恋文を渡せなかった理由

ツトム

ツトムという名の鳥 ツトム の黄色い翼 ヒナ菊のような ツトムの鋭い爪 鷲のような ツトム のつぶらな瞳 鷹のような 鳥類最高位の称号 ツトム いなくなった 伝書鳩 平和の象徴 鳩のマーク 青い空に 放されし 白い鳩 どこまで飛ぶのか 白い鳩 高く 高く 空高…

MOTHER

ねえマザーぼくは疲れたよ 桜の木の下でお祈りしていたよ ねえマザー 理性が崩れるよ トリケラトプスの母さん 卵うんだ 今も昔もロックンロール ナイアガラトライアングル ねえマザー 僕にはもう 明日はないよ ありがとう ありがとう あいつはナイスガイ ね…

へそについて

ぼくは頭ではなくへそでものを考える へそはからだの中心だから ぼくのへそは目がみえる 腹巻きにかくれてへそはおまえを見ている へそはたまにいやらしいことを考えている ぼくはへそをまもる ぼくが死んでも へそは生きている へそを恨んだりしない 綿棒で…

10000人オーケストラ

天国で音楽を聴く 最前列のど真ん中のチケットで 開演10分前 すでに会場は満席になってます 虫歯が疼いてたので歯に根治水と正露丸を詰めてあります 隣席の御老人は白髭の紳士でこちらを見て微笑んだ顔に数百本の皺が印象的です 演奏がはじまりました 指揮者…

44マグナム

製造会社の金型加工場でモデルガンを改造しマグナムをつくった 撃ってやりたいやつがいたからだ 44口径 弾は単発で1発しか出ず 勝負は1発で終わる 撃ってやりたいやつがきた こめかみに狙いを定め 心をこめて引き金を引いた ぷすっ すかしっぺのような音が…

ひとりしりとり

一万円札を3で割った額 腐った寿司 しぼんだ花 悩ましいポーズ ズブの素人 隣の枯れた芝生 古いおんな なじめない都会 イボころり リタイアした選手 ゆるいパンツのゴム 無邪気な父 ちまたの悪い噂 さなだ虫のさなぎ ギロチンチョップ プーさんのマグカップ …

醜い動物

顔はヤクザ からだはヤギ わたしは憎まれる動物 耳はロバ からだは王様 王様は四つんばいで正々堂々と歩く 動物はなぜ笑わないのか 怒ると吠え 悲しいと吠え ただ闇雲に吠え 笑顔が素敵な17歳 なぜ笑わないのか 醜いアヒルの子 カブトムシ が 1㌧のオモリを…

檻のなかの熊

なんにもしたくないときは何してる? 石のように動かないでじっとしています きみの目にぼくはどういう風に映ってるの? アレルギー体質のミドリ色の男に映っています ぼくと目があったときなぜすぐ目をそらすの? 眼鏡が合わなくなってきてるからです 合わ…

ネギの一本喰い

おとこのこみたいなおんなのこと おんなのこみたいなおとこのこが ネギの一本喰い競争をしていた どちらも負けずぎらいで 曲がったことがきらいな性格だった 参りました、辛くって苦くって、のどが詰まりました と先に降参したのは おんなのこで 涙と汗がは…

カビキラー

いまぼくは目の前のカビがはえたパンをながめている ジメジメした梅雨が好きだ きみは3年間開けたことのない冷蔵庫を開ける勇気はあるかい 高価な楽器ほど湿気に敏感で梅雨になるとカエルがつぶれたような音で鳴く カエルの大合唱がいっせいに鳴き止む 静寂…

さかな

ひとが縦型だとしたら さかなは間違いなく横型だろう さわったらぬるぬるするのは ひとの手につかまれないためであろう ある日あさおきたら ベッドのうえにさかなが寝ていた ふとんのなかがなまぐさかった おめでたいときに飾られたおかしらつきの鯛に顔がに…

酸欠な電車はおおきな電話ボックスのようだ

美しいものって誰がみてもほんとうに美しいのだろうか 女子高生がみんなキツネにみえる ひとの形をしたサナギが孵化する ジメジメした廃墟と化した電話ボックスで エッチした

火あそび

学校では教えてくれない じょうずな燐寸の擦りかた 教科書には載ってない 導火線への火の灯しかた 一生懸命清書したつもりの恋文の 文字が 笑っているような字に みられたのが 悔しくて 眠れなかった 裁縫箱にあたった無数の折れた針 解剖と縫製 アルコオル…

キスの日

部屋の灯りを消してからキスをして 眠っているときにキスをして 笑っているときにキスをして 笑点を見ながらキスをして 幽霊屋敷でキスをして キツネにつままれながらキスをして 息止めて酸欠状態でキスをして 風邪の日はマスクの上からキスをして 救急車の…

青年よ神輿を担げ

映画監督のあたまのなかにはすでに映像がながれている カメラ女子が被写体を探しているときの目にぐうせん僕が写る 朝陽が昇ると同時に 恋人はキスをする おたがい3回づつまばたきをした きょうも晴れ 私含め神輿を担いだことのない青年が増えている 青年よ…

泣きたいのにうまく泣けないぼく

あたたかい場所 すこし眠くなる 生後20歳になる赤ちゃん が泣いている ウソ泣きかどうかわからないけど 公園のベンチの木漏れ日が眩しくて まばたきできないでないている はいはいしてたら迷い子になった 森のなかで 背伸びして しゃがんで でんぐり返りしし…

リスト

見てしまってはいけないもののリストにあなたの日記帳があるように それからというもの秘密を知ってしまったぼくは 食べてしまってはいけないもののリストにトリカブトや毒キノコがあるように、 笑い茸を食べてしまったぼくは 顔がニヤけて微笑みがとまらず…

13日の金曜日

ホコリのたまった古本を一冊づつ紐といていくと 活字のなかに愛が生きてまだ息をしていた ロビンフッドの章のページを開くと、みどりの文字に羽が生えて妖精のように森にかえっていった 冒険の書が消えた日、気が触れたぼくはわけもわからずに泣いた 三島由…

孵化

空想のなかでうまれて 空想のなかで死んでいく無数の命 中指にペンだこをつくることのなくなった現代人 その物語の誕生秘話、奇蹟が重なり鳶が鷹を産んだ 結局ぼくがまもることのできるのはたったひとりで ぽつんと凍土に生み落とされ生暖かい雨の日に孵化し…

不自然なふたえまぶた

腫れぼったい、ふたえまぶたに恋をしたおとこの子は幾つになっても瞳の奥に恋をするあさ、鏡のまえでつくったふたえまぶたはその不自然さが美しいきみの瞳が輝いているのは教科書を読んでいるときではなく漫画を読んでいるときだ夜になると眠くなってまぶた…

すきなひとはいますか

ぼくのよこでずっと笑っていてくださいと彼は言ったけれどそれにそれほど重要な意味があると気付かなかった彼女はわたしはいつも笑ってるように見えるけどあなたの見ていないところで泣いているのよと答えたそうじゃないんだ、きみの笑顔が僕のたからものな…

永遠にはデリカシーがない

腫れものにさわるように 傷つけないように 傷つかないようにしたのが逆効果 かえってきみを傷つけてしまったようだ そんなことなら最初からえぐい三角形の 彫刻刀のようなので傷つけてしまえばよかったと後悔する 傷モノにされたわたしが今あなたを恨んでは…

原木のうた

鼻の下をのばさずにまともな顔をしてきみのとなりに座っていたことがかえって可笑しくみえたらしいきみのほしいものが知りたくて仕方ないそれが干し椎茸の原木でないことはあきらかだ木枯らしの吹いた日のことだった からだの芯からあたたまってみませんかそ…

いまいちばん誰がすきなの

誰がすきなのかわからないくらい 誰かのことがすきだ 自分自身の最低な部分を原稿用紙に書け という課題が筆記試験にでた ぼくは制限時間ぎりぎりまで考えたが 白紙の答案用紙を提出した それを書いてしまったら とびっきり善人になっちゃう気がしたからだ …

ガチャ目

わたしの左目と右目の大きさは極端に違いまして 左目は宇宙人の目に似てるとよく言われます 右目で1回まばたきする間に左目を3回パチクリさせます トンボのメガネは水色メガネ 右目で空を見上げながら左目で新聞を読みます 青空が目に沁みる日は渇いた涙に目…

高倉健

しなびたナスみたいな高倉健みたいな顔でたたずんでいる自分を想像してみる それはそれでかっこいいと思います 運動神経の弱い女の子がすきです 孤独なのに孤独をかくそうとするしぐさが好きです 魚を食べると頭が良くなるってほんとだった シンナーを吸うと…