音楽を呼びさますもの

恋文を書くために埋め尽くされた練習ノート

#練習用

老婆

老婆の吐く息はマーシャルのアンプの匂いがする 朽ちて焼け落ちた真空管の匂いがする 殺風景な病院の待合室は老婆のお気に入りの場所 大声を出さなくとも以心伝心 他愛なく親しく 焦髪を振り乱しながら 煙管に火薬を詰める その仕草は人間の単純な最も人間ら…

あおざかな

あなたはあおざかなをなまで食べれますか なまさばをなまで食べれますか なまさんまの内臓をなまで食べれますか きっとおなかが痛くなるでしょう あおざかなを食べてあたまがよくなりました からだがじょうぶになりました 釣り好きな彼女ができました 休日に…

母指球 地球のへそ 無重力

暗闇生活 偏西風 部屋に入り込むすきま風 最後に すき って伝えてから さよならしたい きみ との距離 15センチ もうすこしで 手の届きそうな 位置 ふんばれ母指球 地球のへそを おなかに入れて やば 男子ズボンのチャックのなかが発狂寸前

ギター弾くんだ

愛言葉は え!?ギター弾くんだ あ、ピアノ弾くんだ うそ、笛 吹くんだ へー、太鼓 叩くんだ (ぼくは全身でオナラする) あ、バンドやってんだ 一緒にやろっか

モテ期

モテ期が何処かに行ってしまった いや モテ期なんてなかった もてはやされたけどモテなかった 足はうまれつき短かった 土踏まず中心に歩いたのでいつまでもよちよち歩きだった 喋る前に大きく息を吸う癖 溜め息で歌う学芸会の劇のなか 脇役だったけど黄色い…

涼しくて快適

プロのストーカまたしても真夜中の冷蔵庫の潜入に成功 冷蔵庫のさ なかってさ涼しくてさ 居心地いい 冷えたサラダ 冷めた味噌汁 冷めたピザ ぼくは野菜室で眠る 眠るやいなや 君の声が台所から聞こえる どうやらぼくのことが好きらしい やった 冷蔵庫を開け…

ハピバスデー

U字溝の中にあたまを突っ込んで コンクリの無臭を嗅いで起き上がる 今日出合うすべての女の子を好きになろう 白い砂浜を自転車で駆け抜けよう お見合い写真には白黒の心霊写真を使おう

ブナシメジ

ブナシメジみたいなキノコ🍄が 口のなかからでてくることないかい? ぼくはあるよ 生きるか死ぬかの対戦型ゲームを僕としないかい? 君が死にそうになったら僕がミスするよ 今朝食べたキノコが発酵して昼食時に口から出てくることはないかい? ぼくはあるよ

いまが春なんです、

春という気もちは 持っているお金を全部使ってしまいたい そんな衝動に 似ています 朝型人間は3時には起きるわけです することがなくて ただ目をあけているだけです 新聞配達でもしたらという友人もいますが 春になったら稼いだお金を全部使ってしまいそう…

圏外に住む男

彼は圏外に家を建てた 電波の届かないところから 手紙が届いた まこと つつましい暮らしです 薪割りに精をだしてます 徒歩でいけるところに水汲み場があります 炭焼き小屋はお気に入りの場所で 燻の匂いのする屋根の上から 宇宙と交信しています と書かれて…

早春の港

暦を一枚めくって また春がきて 懐かしい春風の香りをかいで 道ばたのおなじ場所につくしが咲いて またきみをすきになって 桜 かけあしで かけあしで かけぬけた おいつくまで 背中がみえるまで 春が過ぎ 夏が過ぎ 秋がこなかったのはなぜ 季節を追いこした …

スマホ

捨てたくても捨てれないスマホ わすれてしまってはいけないひとの気持ちを忘れずにいきたい

大歳の夜くるもの

今年も残すところあと5日となりましたが いががおすごしですか このへそまがりなブログが曲りなりにつづけられているのもあなたのおかげです 年頭に立てた自分の進むべき道みたいなもの その道を上を歩き続けることの 難しさをこの時期になると毎年痛感せざ…

クリスマスケーキ

クリスマスケーキより冬至南京 しょっぱくてあまくて恋の味がして ケーキの上のへびいちご かぼちゃの上のあずきでポンっ キャラメルいりのかぼちゃ生クリームハート型 笑顔がすてきな17歳 あみあみのセーター あみあみのマフラー イルミの街角はみないよ…

霊柩車

ぼくは外車みたいな車に乗っているので よく外車ですか?イタリア製?とか聞かれるのが苦痛で 木製です 一部鉄製です フィリピン製です ボンネットに機関銃が積載してあります エアバックのなかには麻薬が隠してあります バンパー交換すれば雪の朝はラッセル…

近況報告

歯が浮くようなセリフを言うようになったのはつい最近です 歯が全部ボロボロ抜ける夢を見るようになったのは二十歳くらいだったかな そのころから毎年バージョンアップしてたんだろうね 頭のてっぺんのつむじがむずがゆくなりツノみたいなのが出てきたのは三…

癖字

まず君に最初に伝えたいこと それはぼくの悪質な癖字 とくに「ま」という字がまがります それが恋文を渡せなかった理由

MOTHER

ねえマザーぼくは疲れたよ 桜の木の下でお祈りしていたよ ねえマザー 理性が崩れるよ トリケラトプスの母さん 卵うんだ 今も昔もロックンロール ナイアガラトライアングル ねえマザー 僕にはもう 明日はないよ ありがとう ありがとう あいつはナイスガイ ね…

へそについて

ぼくは頭ではなくへそでものを考える へそはからだの中心だから ぼくのへそは目がみえる 腹巻きにかくれてへそはおまえを見ている へそはたまにいやらしいことを考えている ぼくはへそをまもる ぼくが死んでも へそは生きている へそを恨んだりしない 綿棒で…

ひとりしりとり

一万円札を3で割った額 腐った寿司 しぼんだ花 悩ましいポーズ ズブの素人 隣の枯れた芝生 古いおんな なじめない都会 イボころり リタイアした選手 ゆるいパンツのゴム 無邪気な父 ちまたの悪い噂 さなだ虫のさなぎ ギロチンチョップ プーさんのマグカップ …

ネギの一本喰い

おとこのこみたいなおんなのこと おんなのこみたいなおとこのこが ネギの一本喰い競争をしていた どちらも負けずぎらいで 曲がったことがきらいな性格だった 参りました、辛くって苦くって、のどが詰まりました と先に降参したのは おんなのこで 涙と汗がは…

カビキラー

いまぼくは目の前のカビがはえたパンをながめている ジメジメした梅雨が好きだ きみは3年間開けたことのない冷蔵庫を開ける勇気はあるかい 高価な楽器ほど湿気に敏感で梅雨になるとカエルがつぶれたような音で鳴く カエルの大合唱がいっせいに鳴き止む 静寂…

さかな

ひとが縦型だとしたら さかなは間違いなく横型だろう さわったらぬるぬるするのは ひとの手につかまれないためであろう ある日あさおきたら ベッドのうえにさかなが寝ていた ふとんのなかがなまぐさかった おめでたいときに飾られたおかしらつきの鯛に顔がに…

火あそび

学校では教えてくれない じょうずな燐寸の擦りかた 教科書には載ってない 導火線への火の灯しかた 一生懸命清書したつもりの恋文の 文字が 笑っているような字に みられたのが 悔しくて 眠れなかった 裁縫箱にあたった無数の折れた針 解剖と縫製 アルコオル…

13日の金曜日

ホコリのたまった古本を一冊づつ紐といていくと 活字のなかに愛が生きてまだ息をしていた ロビンフッドの章のページを開くと、みどりの文字に羽が生えて妖精のように森にかえっていった 冒険の書が消えた日、気が触れたぼくはわけもわからずに泣いた 三島由…

淳平

夏が短く秋が長いとそのぶんもの想いに耽る時間が長くなる。淳平はかつて占い師に、水難の相があるて言われたことが気になって仕方なかった。相太は看破に折り畳みのテエブルを広げた。「淳平、賭博を教えてやろう」と花札の札をだして猪鹿蝶の絵札を並べた…

淳平

宗馬相太はヨット部のキャプテンであった。 終戦記念日の翌日、ニュースは200海里付近で一隻の日本の密漁船が拿捕されたと報じた。日本政府はただち船長をはじめ乗組員のに釈放を要求したが、某国から何の音沙汰はないまま数日が過ぎていた。一等航海士であ…

先生

河童に脚を引っ張られた少年。 淳平の名前は学校中に広まった。 淳平はもともと痩せ型であまり血色の良い方ではなかったが、事件後はいちだんと顔色が青白くみえた。 淳平が通り過ぎたあとの廊下はしっとり水で濡れていると噂するものまでいた。閑地の池の周…

金曜のおはよう

金曜日の男は金星人であった。 月曜から木曜までの四人の男と同じ電車で通勤していた。 われわれが宇宙人であることは、 第三者からみて識別することはできなかった。 それぞれのふるさとの星には、 それぞれの男をまっているひとがいた。 先頭車両のドアが…

木曜梅雨の合間に

甘噛みする犬へ。 犬よおまえは何故甘噛み(本気でガブと噛まずに調整)するのだ。 おまえをそんな我儘な犬に育てたつもりはない。 飼い主である紳士は弱りも五十を超え、 新聞を八つ折りにして読んでいる。 犬に与える餌と同じ食事を食している(おもにダシ…